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いわき市に来るようになって、たびたび聞いていた「常磐長孫町(じょうばんおさまごまち)の河童伝説」。
岩崎川のほとりに、河童の碑、祠があるということです。
この伝説は、以前いわき市の古書店で見つけた「いわきの昔語り55話」(鴨志田義康・編)の第28話として収録されていて、いわき訛りで書かれていました。
話者は御代清弥さん(明治44年生まれ)、採録は昭和58年と記されています。
この河童の伝説は、「河童駒引き」とも「河童の侘証文」ともいわれるそうです。
2009年8月、常磐地区、勿来地区での「森と海の川と河童のためのパーカッション・シンフォニー」ワークショップを終え、帰りに訪ねてみることしました。
さて今回、川のそばにあるという情報だけでたどり着けるのか?
まず常磐長孫という地名を頼りに地図を見ながら、県道20号を植田方面から湯本方面へ北上。
この辺りかな?と左折しようとして、ふと見ると「正木屋材木店」。
今年のワークショップの発表会ライブでたいへんお世話になったところです。
そうか!この交差点だったのか!と思うのと同時に、なんだかたどり着ける気がしました。
少し走ってから、たぶんこのあたり、ともう一度左折。
しばらく行くと、道沿いに旅行会社の「常磐ツーリスト」の事務所がありました。
その開放的な事務所の感じに惹かれておもわず中に入ってたずねると、
お仕事中にもかかわらず、町の地図帳を出してくださり、コピーしてさらには手書きで書き込みをしてくださいました。
川まで来て車を停め、さらに川沿いの土手道を歩くと、
ありました!
河童の碑と祠は、確かに見落としそうな土手の斜面を下ったところにありました。
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石碑の両脇には、男女のかわいい河童像が立っており、その横には、施錠された河童の祠がありました。
おそらく中には、ご神体が祀られているのでしょう。
傍らには下に書いた「河童伝説」が書かれた案内板が立てられていました。
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「河童伝説」
藤の花は五月に咲くのが通常です。
それなのに長孫の川土手には、節でもない真夏の土用に、真白い藤の花を見ることがしばしばあるそうです。
これは河童の恩返しだといわれています。
村人に河童が生け捕りにされたと聞いた長老が、今までこの岩崎川で河童が悪さをしたのを見たことも聞いたこともない、可哀相だから助けてあげなさいと言い、それを聞いた河童は右の小指を切って次の様に書いたのでした。
まだ人を殺した事はありません。
しかし私は天王様に人間の生き胆を奉納しなければなりません。
夏の土用の頃、川土手に白い藤の花を咲かせます。
その花を見た年は川に近寄らないで下さい。
必ず約束は守ります、命を助けていただきありがとうございます。
その何年か後の夏の土用の川土手に白い藤の花が咲きました。
人々は河童の花が咲いたと下の堰での水遊びを戒めました。
おかげで川での厄も起こらず済んだのだそうです。
現在では河川工事に伴い藤の姿が消え去ってしまい、この言い伝えを残すのみとなりました。
(文・常磐地区まちづくり懇談会)
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美しい田園風景の中、ひっそりと祀られた河童の祠には、川が生活に密着したこの土地の方々の想いが感じられました。
また、鴨志田義康先生の小型カセット・テープレコーダーを持っての採録取材のご苦労は計り知れません。
「いわきの昔語り55話」には、このような言い伝えが、いわきのしゃべり口調で、55話書き留められています。
あとがきにも、-いわきの懐かしいナマの語りことばによる身近な遺産に触れながら、いわきの昔の自然環境や昔の人々の暮らしの喜びや悲しみや願いなどを思い浮かべたいものです。
そして、ふるさと・いわきをいっそう大切にし、さらに愛していただきたい。
と、書かれておられます。
余談ですが、「河童伝説」を読んでいるとその案内板に、
なんと一匹のアマガエルが!
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